注射「痛くない」と思えば痛み軽く

 注射される時に「痛くない」と強く思うと、痛みが軽くなる――。前もって痛みが小さいと思い込むと実際の痛みも和らげられることを、西宮協立脳神経外科病院(兵庫県西宮市)の小山哲男医師と米ウエークフォレスト大のロバート・コグヒル助教授らが脳活動の分析で確認した。米科学アカデミー紀要電子版に発表した。

 小山医師らは、被験者10人を対象に、信号音の間隔が15秒のときは48度、30秒では50度など、信号音を2回聞かせた直後にふくらはぎに熱の刺激を与える実験を繰り返し、間隔が長いほど痛みが大きいと思い込ませた。

 この後、15秒間隔の時の温度を50度に変えて実験。痛みの程度を評価してもらったところ、30秒間隔で50度の刺激を与えた時と比べ、感じる痛みは小さくなった。

 被験者の脳内の様子を特殊な装置で調べると、痛みが小さいと思い込むほど脳の快感や不快感をつかさどる部位の活動が低下していた。痛みを加えた後は、この部位の働きが小さいほど、体から痛みが伝わる部位の反応も鈍くなった。結果として「思いこみ」が痛みを感じる部位の反応を低下させていることがわかった。