日本人の自虐的英語観と奇跡的願望

TOEFLTOEICと日本人の英語力―資格主義から実力主義講談社現代新書
鳥飼 玖美子 (著)


トーフル、トーイックでわかる日本人英語の弱点!


日本ほど英語検定試験の受験者の多い国はない。でもいったい何のため?各試験の内容を詳細に分析し、本当に必要な英語力を探る。文法軽視は大きな誤り――
最近の日本では、英語教育における文法は、はなはだ肩身が狭くなっている。コミュニケーションと対立するかのように扱われ、文法ばかりやるから英語が話せない、などという意見が常識化している。……
文法など無用だと信じている人も多く、中学生や高校生が、文法なんて無駄なんだけれど受験のために仕方ない、と嫌々学習する傾向がある。
大学受験があるから現実の英会話に不必要な文法を勉強しなければならない、という空気が濃厚で、使える英語を使えなくしているのは大学入試だ、と大学が批判の対象と化している。だが、これは見当違いな考え方だといわざるをえない。……
外国語で内容のある話をしようと思ったら、体系的な文法知識を応用することは当然である。複文を組み立てたり、仮定法を使ったりすることは日常レベルでもあるわけで、そういう際に、文章を作り出し組み立てる力を支えるのは基本的な文法・構文の知識である。だからこそ、検定試験では必ず、何らかの形でそのような知識を問うのである。


 この本を読んで痛感したのは、日本人がよく口にする「読む・書くはできるが聞く・話すはダメ」などというのは実はありえないのであって、この4つは密接に関連しているということである。つまり日本人は、この4つ全てに渡ってあまりよくできていないのである。ここから、近年の文法軽視・実践英語重視の教育方針に懐疑的にならざるを得ないだろう。

 耳の痛い話かも知れないが、間違った一般通念に歯止めをかけるためにも、この本を読む価値は大きい。