証券業界、久々の人気 「就職してM&Aやりたい」

大和証券SMBCなど新卒応募倍増
 M&A(企業の合併・買収)など投資銀行業務を手がける証券会社が、就職活動で学生の人気を集めている。
 ライブドアによるニッポン放送の買収劇で黒子役にも日が当たり、採用の問い合わせが急増。証券業界には「一時的な流行ではないか」と冷めた声もある一方、今後ますますM&Aは活発化するとの見方も強く、「久々の“買い手市場”到来か」とうれしい悲鳴を上げている。
 フジテレビによるニッポン放送の株式公開買い付け(TOB)でアドバイザーを務めた大和証券SMBCは、四−五月にかけて行った平成十八年度の新卒採用選考で、前年度比一・七倍もの応募があった。企業の株式公開の引受業務や投資業務を専門に行っている同社には、応募学生の大半が「M&A業務をやりたいから」と志望動機を挙げたという。
 M&Aのアドバイザー業務に注力する日興シティグループ証券でも、十八年度新卒採用の応募用紙は前年比三割強の増加となったという。
 近年学生から人気上昇中の外資系証券でも、入社希望者は更なる増加傾向を見せている。ゴールドマン・サックス証券では今春の採用応募者が二年前に比べて倍増した。外資系証券は年間を通じて実務経験者を即戦力として採用するのが主流。新卒採用枠は数人程度の狭き門だが、競争倍率は一層厳しくなっている。
 証券会社や銀行をはじめとする金融機関はバブル崩壊後、度重なる不祥事と不良債権問題による経営悪化などで新規採用を抑えてきた。
 だが、景気回復や株式の新規公開(IPO)急増を受けて、ここ数年は証券会社が先行して積極採用の姿勢に転換。ニッポン放送をめぐる派手な買収劇では証券会社の投資銀行部隊がまるで代理戦争の様相をみせた時期が、ちょうど来年度就職活動時期と重なり、金融志望学生の心をとらえたようだ。
 このため、「はやり感覚で応募してくる学生も少なくない」(大和証券SMBC)とブームに冷ややかな見方もある。だが、産業界は業界再編で生き残りをかけたM&Aが活発化するとの声も根強く、金融志望学生の熱い視線は当分衰えそうにないとみられる。