才能と素質

このおかげで,二ケ月後には未解決部分をすべて解決して,既約概均質ベクトル空間の分類を完成する事が出来ました。実は私は学部4年の時に自分の考えた事をレポートにして指導教官だった伊原康隆先生(関数体の非アーベル類体論の研究で有名)に提出した所,研究室に呼ばれ「君は数学の才能が無いから別の道を探しなさい」と言われて,ショックを受け,それ以来,才能とか素質という言葉が大嫌いになりました。分類が完成してから伊原先生を訪ね「才能が無くても研究が出来ましたよ」と言うと「いや,才能がなくては出来ない。ただ私が君の才能を見抜けなかったのだ。スモウでいえば,君は異能力士だ」と言われ,それはそれで悪い気はしませんでしたが,この経験から,私は院生を指導する時に,決して才能が無いとか,素質がないという見方はとらないようにしています。人間の能力は決して決めつけられる種類のものではないし可能性は無限にあると思います。